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チノパンツ再考 1(棚からフク掴み 5 )

目次

チーノーズパンツについて再考して見る 1

何年かに一度訪れる基本アイテムの見直し

夏が近づくこの頃、衣替えをしていて、ふっと気になったのはチノパンツ

ワードローブから消えたことの無い、ベージュのコットンパンツです

今ではコットンパンツの代名詞となっていますが、よーく見ると奥深いところが見えてきます

今回は自分の服飾史を思い出しながら、じっくりと考えて見ることにしました

長くはなりますが、一挙、4モデルを解説します

お時間の許す限りお付き合いください。

そもそも、チノパンツとは?

今ではポピュラーとなったベージュのコットンパンツの総称となっているが、’60年代〜’70年代にはあまり市民権を得ていなかった呼称でした。

特に、日本では IVY が流行っていたいた’60年代から’70年代、綿素材のパンツはコットンパンツでした。コットンパンツは呼び名が長いので、「コッパン」や「綿パン」と呼ばれていました。

主に、平織りのポプリン素材が主流でした。

アメリカ軍がベトナム戦争に本格的に参戦したのが、1965年。

アメリカ軍がアジア地域での着用に用いられた綿綾織り素材を中国から調達していたことから、「中国の生地」chaina clothからチーノーズクロスと呼ばれ、そのままパンツの呼称となっていたと言われている。(呼称の起源は諸説あり)

日本は、アメリカ軍の中継地として、駐留米軍基地が点在し、任務が終了し、アメリカ兵が帰国する際、所持品を換金することがある。中には遺留品も含まれる。

そのため、中古市場に「放出品」として市場に出回った商品である。

当然、ミルスペック(米国軍基準)を満たしているため、丈夫で耐久性もあり、アジアの気候に合わせて作られていたので、軍物が好きな古着マニアの中では、当時は価格も安かったので、有名な商品であった。

昭和生まれの自分は子供の頃、上野のアメヤ横町でよく見かけたのを覚えています。

’90年代の古着ブーム時には、デニムと並ぶ人気商品でした。

特に66モデルと呼ばれるモデルはそれまでのモデルとは違い、細身のシルエットに移行しています。

ベトナム戦争が長引いたこともあり、大量に生産されたのですが、何故か高値で取引されていたと記憶しています。

当初はオフホワイトが主流でしたが、汚れが目立たない、ベージュ系に徐々に移行していきました。

多少の色の差はありますが、サンドベージュの1色に統一されています。

今回は現役のこの4本について解説します。

少しずつ違いますが、上から

RRL (ダブルアールエル)ミリタリーフィールドパンツ

Brooks Brothers コットンギャバ ドレス2P パンツ

Barry Bricken コットンツィル 1P チーノーズ

GTA コットンギャバ NP TWISTED PANTS

RRL (ダブルアールエル)ミリタリーフィールドパンツ

66モデルが有名という話はしましたが、ネット上で検索すれば沢山出てくるので、ここでは、初期RRL(ダブルアールエル)の紹介です

66モデルが有名ですが、40年代モデルにみる極太シルエットです

生地はユニフォームツィルと呼ばれるオリジナル素材で、ピーチ加工しており、起毛したような風合いが

特徴的です

フロントポケットは形状も手が入れやすく、縫いやすいようにスラント仕様で前にずれているのですが、

カーブ仕様+ダブルステッチととても凝った作りになっています

ヒップポケットを見ると66モデルのような両玉縁仕様で、少し重なる様にボタン位置が高く付けられているのが解ります

写真では判りにくいのですが、ウェストのカーブがあり、前後差が大きいです

ウェストベルトが無い分よりフィットするようにパターン上でも工夫が見て取れます

ヒップボタンは左側のみに付いています

フロントから見た印象です

太めのステッチが効いた中にも、品の良さを感じる印象は素材の良さを物語っています

前開きはボタンフライで、コインポケットは両玉縁と60年代モデル仕様となっています

使われているボタンも尿素ボタンの形状を踏襲しています

その他、補強用にカンドメミシンが使われています

右フロントポケットの袋地は、しっかりしたツィル生地に、ミルスペック風な仕様に関して以下の様な記載がありました

参考までに転記しておきますね

MILITARY FIELD PANTS

100% COTTON UNIFORM TWILL

9 OZ KHAKI – SHADE No.1

MFG BY DOUBLE RL REG US. PAT QP

ESTABLISHED SEPTEMBER 1993

RN NO.41381

WAST :25″ THRU 40″

と、こだわった仕様になっているののも、ラルフローレンらしいディテールです

BROOCKS BROTHERS のドレス・チノ

 

スラックス仕立てのチノパンツです

いわゆるドレスチノと呼ばれるビジネス用のスラックス仕立てのパンツです

フロントには2本のプリーツと呼ばれるヒダが付いています

股や腰周りの運動量を確保するためです

シルエットもややゆったり目ですが、膝からしたが細くなっているテーパードと呼ばれるシルエットです

裾幅が、21cmと広めなので、W巾(折り返し部分の巾)を3.5cmで仕上げています

裾の試用に関しては後述しますので、そちらを参考にしてください。

内側の仕様を見てみましょう

腰回りには、マーベルト言われる付属がつきます

スレキという付属用の薄手の生地と滑り止め、もしくはウェスト部分の補強として作られた付属を指します

本製品は生地がストレッチ性のあるコットンなので、ゴム状のテープになっています

上記の写真右端を参照してください(ネイビーのロゴテープが付いてる部分)

アメリカブランドに多いのですが、ウェストサイズとレングスサイズが選べるのが特徴です(写真上左端)

ジーンズブランドに30 X 32 という表記を見たことがあると思いますが、ウェストが30インチでレングス(股下)が32インチという意味です

また、ブランドネームには ADVANTAGE CHINO ELLIOT という表記もありますので、このパンツのシリーズとモデル名と推察できます

股ぐり部分(写真上中央)の仕様は、前後の身頃が4枚重なる、縫い代が集中する部分に当て布が付けられています

縫い代が肌に当たるストレスを軽減する役割やトランクスを履くようになったのは実は近年1935年にブリーフが登場し、第二次大戦時に軍に採用されてから、一般化したと言われています。

それ以前はオールインワン型の下着だったのです

二次大戦以前のスーツに採用されていた名残だと思われます

メンズの下着に関しては別の機会にしますね

不思議な箇所が1箇所あります

写真上右端を見てもらうと判るのですが、このスラックスはウェストの直しができません

マーベルト部分に接ぎがないので、詰めたり出したリができない仕様になっています

縫製工場の問題ではなく、パターン(型紙という生産用設計図)の指示書が間違っていたのだと思われます

縫い代部分にはわざわざ、パイピングという手間の掛かる仕様になっていますが、活かせないのです

素材も現代の素材でポリウレタンが2% コットン 98%という2000年代以降に開発された素材が採用されています。

これは、GAPが世界的なSPAブームを作り、チノパンツをベーシックパンツの地位を獲得し、BANANA REPUBRIC がニューヨークスタイルを代表するブランドとして、チノパンツをオシャレなパンツとしてブランド化し、この分野で成功した影響だと筆者は思っています

フロントから見た写真です

お気づきのように、前述したウェスト部分が直しができないことに加えて、フロント釦がぶち抜きという仕様になっています

スラックスであれば、フック+持ち出しタブがよりクラシックなデティールとなります

ヒップポケットも片玉縁という仕様なので、これも、カジュアルというより、ワークウウェアのデティールだという印象です

あくまで、個人の感想です

BROOKS BROTHERS(ブルックス ブラザース)について

ブルックスブラザースは1818年創業のアメリカ最古の紳士服販売店です

2018年に200年を迎え、世界各地でエキシビションが開催されていました

なんといっても、一番の顧客は歴代のアメリカ大統領です

チェスターコートと呼ばれるカシミア素材のコートは政治家にとっては憧れの1着となっています

エイブラハムリンカーン、ジョン F ケネディ、バラク オバマ前大統領が時代に応じて着こなしたことで、注目を集めた既製服の小売店ですが、勿論、大統領はオーダーメイドです

イタリア人のアメリカブランド好きは業界では有名ですが、2000年にルクソティカグループの御曹司であるクラウディオ・デル・ヴェッキオに買収される

このイタリア人の買収によって、ミラノでブルックス ブラザースが火付けとなり、アメリカントラッドのトレンドが生まれます。

ポロカラーと呼ばれるボタンダウンシャツにMILANOと呼ばれるモデルが登場したことで話題になりました

しかし、2020年に破産宣告をし、SPARC Group LLC に売却されています

次回は「最高のチノパンツ」といわれるBARRY BRICKENについて解説します

高尾まで、お読みいただき、ありがとうございます

良い一日をお過ごしください

 

 

 

 

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